札幌で変化の兆しを見せる「ペトロヴィッチ流」 浦和を離れドイツで得た新たな刺激
FW都倉も証言「意外と守備のことも言われるんだなと思った」
もうひとつ注視したいのは、第5節から3試合連続無失点を演じている部分だろう。身長195センチの韓国人GKク・ソンユンのビッグセーブで凌ぐというよりも、チーム全体のタフなプレーで守り抜いているところは特筆に値するのではないだろうか。
浦和レッズ時代のペトロヴィッチ監督は、攻撃への比率を徹底して高めるあまり、ちょっとしたミスをきっかけにカウンターから失点する場面が散見した。札幌でも、そうした危うさを持ち合わせるチームになり得ると予想する人もいたことだろう。だが、ペトロヴィッチ監督は「攻撃的ではない。超攻撃的だ」と強烈なメッセージを発信してチーム作りを開始しつつも、内実としては守備のエッセンスもしっかり注入されている。「攻撃のことばかりではなく、意外と守備のことも言われるんだなと思った」と、FW都倉賢も明かす。
選手がそう感じていることについてペトロヴィッチ監督本人に問うと、「フットボールのトレンドというのは、日々変わっていくし、私はそれを常に頭に入れている。今朝も朝5時まで欧州リーグの試合を見ていたよ(笑)」と笑みをこぼした。具体的な言及こそ避けられた格好だが、札幌というクラブが現時点で有するものを踏まえたうえで、モダンサッカーの要素を意図して織り込んでいるということなのだろう。
そして「例えば…」と、次のようにも続けた。
「医師が医師免許を取得した時と変わらない知識量で仕事をしていたならば、質の高い医師になることはできないだろう。医学は日々進化をしていて、新しい薬や治療法も生まれてくる。医師はそうしたものを常に吸収していく必要がある。フットボールでも、近年では世界を見渡せばFWの選手が前線からファウル覚悟で相手の攻撃を止めるような場面も目にする。フットボールの世界も医学の世界と同じ。トレンドが変われば、やるべきことも変わる」