降格危機のハンブルク、主将・酒井高徳「あの時計を止めたくない」と決意の理由
1部在籍時間を刻み続ける時計、酒井も自覚「自分がキャプテンの間に…」
練習場でチームのトレーニングを観ていると、地元の方から「タカハラ!」と声を掛けられた。彼らが10年以上前の日本人選手の名前を口にするのは、それだけ高原直泰という選手がこのチームに与えたインパクトが大きかった証だろう。
しかし、現在のチームに在籍するクイックスターの伊藤達哉、そしてキャプテンの酒井高徳の貢献度も引けを取っていない。酒井は昨年に続いてキャプテンを任され、昨年から、3人の指揮官からいずれもチームリーダーの任を与えられている。チームの危機を前に、キャプテンは断固たる思いで残留を果たすと決意している。
本拠地のメインスタンドから見て右斜め前方の北西側スタンドにデシタル時計がある。時計は毎分毎秒と時を刻み続けていて、これはドイツ・ブンデスリーガ所属クラブで唯一、2部へ降格したことのないハンブルクの1部在籍時間を示している。
酒井が言った。
「あの時計を止めたくない。自分がキャプテンの間に、あの時計を絶対に止めたくない。いつもそう思いながら、このピッチの上で戦い続けています」
その時計は、すでに54年以上の時を刻み続けている。
ブンデスリーガ第31節。ハンブルガーSVは残留を争うフライブルクに1-0で勝利し、入れ替え戦行きとなる16位を争うヴォルフスブルク、マインツ、フライブルクと、残り3試合で勝ち点5差とした。
(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。