ブンデス日本人選手を襲う受難の日々 マインツ戦の会場で感じた“貴重な財産”
長谷部に見る熟練の技と生き抜く術
そして、そのシュツットガルトと対戦したHSVの日本代表DF酒井高徳は、クラブ史上初の2部降格危機に晒されている。キャプテンとして多大な責任を負う酒井は右サイドバックでフル出場したが、チームは先制するも追いつかれて勝ち点を伸ばせず、第28節を終えて勝ち点19の最下位と厳しい状況に立たされている。
また、同じく残留争いを繰り広げている日本代表FW大迫勇也が所属するケルンは、アウェーでホッフェンハイムに0-6と完敗。ケルンのシュテファン・ルーテンベック監督は「こんなパフォーマンスでは、到底1部に残留することなどできない」とチームの低調ぶりを嘆いたほど。大迫は日本代表の欧州遠征中に別メニュー調整となってウクライナ戦を欠場し、この試合に先発出場を果たしたが、不振のチームで輝きを放てず、後半11分で交代している。
“日本人ブンデスリーガー”の苦境はまだまだ続く。前節まで4位で来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を狙える位置につけるフランクフルトは、アウェーでブレーメンに1-2で惜敗。相手に先制されるも同点に追いつく粘りを見せたが、最後はGKルーカス・フラデスキーが味方クリアの目測を誤って後逸してオウンゴールを喫してしまった。
ただ、この試合で先発フル出場した日本代表MF長谷部誠のパフォーマンスは、決して悪くはなかった。ニコ・コバチ監督体制下では主に3バックのリベロでもプレーし、常時安定したプレーでチームを支えている。ブンデスリーガの舞台は相手のプレス&チェイスが激しく、容易にボールキープできないはずだが、長谷部は熟練した経験と広角な視野を生かして後方でチームをコントロールし、好調なチームを牽引する存在となっている。昨年まで悩ませていた右膝の痛みが緩和されたことも大きいが、何よりこの年齢でチームの中心として戦い続ける実績は、他の日本人選手と比較しても特筆すべき事項だろう。もっともフランクフルトは、今回の敗戦で順位を6位に下げ、来季CL、そしてUEFAヨーロッパリーグ出場権を争う戦いは激しさを増している。
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。