日本の高校サッカーから“考える力”を奪うもの ベルギーで痛感した同調圧力の有無
自己主張が強いというより「誰にも非難されない」環境
日本人選手は規律があり、監督の指示通りにプレーしようとする。同調圧力の下で育った日本人はチームプレーに向いている。ただ、サッカーはそれだけでは足りない。
時には監督の指示を無視しても、違うことをした方が良いこともある。相手の出方や試合の流れが予想と違うことなど日常茶飯事。その時に監督の指示を待っている余裕はない。選手たちが自分たちで作戦を変えなければいけないことがある。相手を見ながら臨機応変に判断する、日本の選手に足りない能力だと思う。
では、なぜ日本の選手はそれが苦手なのか。自分で考え、自信を持って実行に移すことができないのか。ヨーロッパや南米の選手たちは「個」が強いからだと思っていた。でも、リエージュの高校生を見ていて、たぶんそうではないと気がついた。
ベルギー人が、ことさらに個性が強烈だとは思えない。単にヒゲが流行っているだけなのだ。みんながやっているから、ヒゲを生やしてみたにすぎないのだと思う。街を歩く大人と比べても高校生のヒゲ率は高いくらいで、つまりそれは流行だからだろう。自己主張が強いというより、単に誰にも非難されないから好きなようにやれているだけなのだ。間違いないのは、日本の高校生がヒゲを生やそうとする時に必要になるだろう勇気や意思の強さは、ベルギーの高校生には全く必要ないということである。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。