日本の高校サッカーから“考える力”を奪うもの ベルギーで痛感した同調圧力の有無
ベルギーの街で多く見かけた、ヒゲを生やした高校生の姿
日本代表のマリ戦、ウクライナ戦が行われたベルギーのリエージュの街を散歩していると、昼になって学生たちが一斉に狭い通りに出てきた。小学生から高校生まで、学校が集中している場所らしい。
そこで、そういえばと足を止めて観察すると、やはりそうだった。高校生の男子3人に1人くらいがヒゲ面なのだ。なんとなく現地の高校生はヒゲ面が多い気がしていたのだが、かなりの割合で、しかも無精ヒゲレベルではなくガッツリ生やしている。
なぜ、こんなにリエージュ高校男子のヒゲ率が高いのかは謎なのだが、逆に日本の高校生にヒゲを生やしている生徒がいないのはなぜだろうと考えてみた。
高校生がヒゲを生やしてはいけないという法律はない。校則はあるかもしれないが、そもそも誰にも迷惑はかけていない。なぜ、日本の高校生にヒゲがいないのか。
おそらく非難されるからだろう。高校生らしくない、生意気だ、目立ちすぎる、周囲に悪影響を与える……とにかくヒゲを生やすと周囲にいい顔をされない。つまり日本の教育、社会は理屈抜きに周囲に同調することを良しとしているわけだ。
日本の高校年代のサッカー選手にも当然、ヒゲ面は見かけない。冬の風物詩である全国高校サッカー選手権で、もしFW陣が全員ヒゲ面だったら、メディアはすかさず「ヒゲ3トップ」などと報道するだろう。ヒゲの有無はプレーとはなんの関係もない……だろうか?
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。