W杯前の不振は吉兆になり得るか? ハリルが貫く「勝つためのチーム作り」とその弊害
6大会連続出場の日本で語られるW杯イヤーの経験則
マリ、ウクライナとの強化試合はいずれも芳しくない内容と結果に終わり、ロシア・ワールドカップ(W杯)への不安や監督解任論も出てきている。ただ、2010年南アフリカ大会前の方がもっと悪い状態だったと振り返る人もいて、むしろ大会前の低調さは吉兆だという楽観論もある。
そういえばバヒド・ハリルホジッチ監督が就任した時に、「トルシエ監督に似ている」という意見も聞いた。筆者はフィリップ・トルシエとハリルホジッチはあまり似ていないと思うが、過去の事例に照らしていろいろな比較ができるようになったのは、それだけ日本がW杯の経験を積んできた証と言える。6大会連続で出場する日本は、もはやW杯常連国なのだ。
南アフリカ大会との比較は興味深い。ただ、あの時と状況は同じではないと思う。当時の岡田武史監督は本大会メンバー発表後の壮行試合で、韓国に0-2と完敗して守備重視の戦術に切り替えたが、それまでは攻撃型のスタイルを志向していた。やむを得ずの撤退で、退く余地があったとも言える。
一方、ハリルホジッチ監督は予選の途中から現在のプレースタイルにしているので撤退幅があまりない。ベース部分でのドラスティックな変化はないと考えた方がいい。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。