「あいつら、よかったよ」 コスタリカ戦後の大久保の一言ににじみ出る個性派集団の一体感
柿谷自身もゴールをこじ開ける
その12分後、今度は柿谷自身も輝いた。背番号「11」も虎視眈々と得点を狙っていたのだ。
「もちろん自分は得点をとって、試合をひっくり返すことを考えていた。残り少ない時間でも、点を取るには十分な時間だった。ワンチャンス、しっかり決めていこうと思っていた」
香川の浮き球パスを相手DFがクリア。それを拾うと、GKを目の前にしながら冷静にコースを突き、ゴールへと流し込んだ。
試合後、2人からは感傷的な言葉は聞かれなかった。W杯初戦の決戦まで、残り2週間を切ったいま、個人の充実度以上に、いかに勝つための集団になれるかを突き詰めるときだからなのだろう。
ただし、先輩の大久保は、彼らの活躍に対して一言だけ添えた。
「あいつら、よかったよ」
意識し合わないはずがない間柄。誰かが試合に出れば、誰かが外れる関係にもなり得る。この日、無得点に終わった大久保が、あえて短く足した言葉からは、今のチームに一体感が存在することをうかがい知ることができた。そして、この日、無得点に終わりながらも、後輩たちの活躍を素直に喜んだ大久保の存在もまた、チームにまとまりを生み出す力の一つになっていると言えるだろう。
柔和な表情で語らう3人が合宿地で醸し出していた空気感には、特別な何かが存在していた。その才能たちがピッチ上で合わさったとき、彼らの“シンパシー”は力になる。
コスタリカ戦で見えたその萌芽を、もう一度ブラジルの地で目にすることができるかもしれない。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE
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