『サッカーをやる人』ほど『サッカーを見ない』 日本サッカーの小さな大問題
■日曜10時キックオフは、少年サッカーの日常でもある
日本の10時は、地球の反対側に位置するブラジルでは夜の10時に当たります。このくらいのキックオフ時間で試合が組まれる例はないわけではないですが、稀少なのは確かです。今回のW杯で言えば、10時キックオフとなったのはこの日本とコートジボワールの一戦のみです。
なぜこうなったのかと言えば、それはもちろん日本側の要請によるもの。日曜朝10時と言えば、ある種のゴールデンタイムです。当然ながらそれぞれの家庭事情にもよりますが、日本の多くの家で家族そろってテレビの前に座ることが可能な時間帯と言えるでしょう。「みんなで楽しく観戦できる時間帯にW杯を」。そんな配慮があっての時間設定で、相当な高さの視聴率が期待されています。
ところが、サッカー関係者に限定して「視聴率」を測定することができたとすると、その数字はガクッと落ちてしまうかもしれません。サッカー関係者はサッカーが嫌いなのかと言えば、そうではありません。なぜかと言えば、その日が「日曜日」だからです。少年サッカーチーム、スエルテ・ジュニオルス横浜の久保田大介代表は「10時キックオフは少年サッカーでは一番“普通”の時間帯なんです」と苦笑を浮かべます。
少年に限らず日本の育成年代のサッカーは、基本的に月から金曜日が練習や休養に充てられて、土・日曜日に試合が組まれています。そうなのです。日曜日朝10時と言えば、まさに全国各地でボールが蹴られている時間帯。社会人リーグなどでも、日曜日に試合が組まれるのは当然のことで、それが午前中であることは珍しくありません。それはW杯開催期間中であっても、例外ではないのです。
「こうなることは半ば予想していました」。
久保田代表はそう語りつつも、組み合わせの決定から半年の猶予があったことを思えば、それに配慮する動きも出てくるのではと期待していました。しかし、現実は非情で、多くの地域でこの日に公式戦が組み込まれてしまっています。全日本少年サッカー大会の予選であったり、地域のリーグ戦であったり、あるいはクラブチームが主催するミニ大会であったりが、「朝10時キックオフ」なんて日程で普通に組まれているのを目の当たりにすることになりました。