J1札幌の「マインドを変える」 名将ペトロヴィッチが挑む“人材供給クラブ”からの脱却
プロビンチャが描き出す壮大な挑戦
言うまでもなく、そうした変化を絶対に起こせる確約はない。ただし、就任会見で発していた前述の言葉を、指揮官自らが強く発信することで、活躍した選手がステップアップ移籍をしていくことが当たり前となっていたクラブの光景は、ガラリと変わるかもしれない。
ファンにとっても、若手の頃から熱心に声援を送ってきた選手のキャリアを、最後まで間近で見届けられるかもしれない。かつては応援する選手が活躍すればするほど、移籍の可能性も高まっていたが、それが変わるかもしれない―――。そうした可能性を意識できるだけでも、ペトロヴィッチ監督によるチャレンジの第一歩は、すでに果たされているのではないだろうか。
ビッグクラブが弱体化や経営難によって、「選手を育てて売る」スタイルへと変化するケースはこれまでにもあった。だが、プロビンチャ(地方都市の中小クラブ)が力をつけ、ビッグクラブと渡り合っていくケースはそうあることではない。
まさに今、始まりつつある札幌とペトロヴィッチ監督とが描き出すストーリー。結末は不透明なものの、ひとまずその序章は壮大なものに感じられる。
【了】
斉藤宏則●文 text by Hironori Saito
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images