J1札幌の「マインドを変える」 名将ペトロヴィッチが挑む“人材供給クラブ”からの脱却
移籍金がクラブ経営を支えていた事実
マインドを変える――。
ペトロヴィッチ監督就任による“プレースタイルの変化”は、誰もが当たり前のように予想し得るものだが、この部分の変化については札幌というクラブの歴史を考えた時、ある種、特別なチャレンジのようにも思えてくる。
地方都市の育成型クラブである札幌からは、過去にMF山瀬功治(アビスパ福岡)、MF今野泰幸(ガンバ大阪)、DF西大伍(鹿島アントラーズ)、MF藤田征也(湘南ベルマーレ)などの他にも、FWダヴィやMFダニルソンといった外国籍選手もJリーグ内の強豪クラブへとステップアップ移籍をしていった。その後もアカデミーからトップチームに昇格した選手が複数、他チームへと戦いの場を移している。
もちろん、選手の移籍はこの世界では日常茶飯事である。重要なのは、そうした選手たちの移籍金が札幌のクラブ経営を大きく支えてきたという事実だ。2010年前後は移籍金を得たことで、なんとか債務超過を回避できたシーズンもあった。それ故、見ている側も主力選手が移籍をしていくことを極めて冷静に、ともすれば必要な出来事として捉えてしまっていたところもあっただろう。ペトロヴィッチ監督は、そうしたマインドをも変えようとしているのだ。
2013年に野々村芳和社長が就任し、以降はクラブの予算規模が着実に大きくなってきたからこそできるチャレンジでもある。しかし、主力選手が他クラブへと移籍し、そこで資金を得る流れが確立されてきた札幌のストーリーを劇的に書き換えるのは、決して簡単なことではない。グラウンド上の変化以上に、相当な覚悟を持って挑まなければならないはずだ。