知将・城福浩監督の鋭い視線 ザックJAPANが抱える2振りのもろ刃の剣
ダブルエースへの高まる依存度
2本目のもろ刃の剣は、香川と本田への依存度を高める代わりに、チームとしてのオプションを持たない現状だ。
「このチームは香川と本田のチーム。2人への依存度があまりにも高い。彼らの良さを出すために遠藤保仁(ガンバ大阪)がいるが、曜一朗や大久保嘉人(川崎フロンターレ)が彼らとイーブンな立場で要求しあえるようになればいい。今の代表は香川、本田、そして佑都がお互いを見ながら、よりいいプレーを引き出しあうようにしている。それができると、チームとして攻撃のリズムが出てくる。その反面、彼らが多くボールに関わるため、周りの選手のボールタッチ数が少なくなっているのも事実だろう。機能している間は問題ないが、本大会では状況によってはギアチェンジの必要も出てくるかもしれない。
例えば、本田が相手に抑えられている、もしくはコンディションが悪い。そういう時に大久保の長所を最大限生かせるようなサッカーにシフトできるのか。そのためにも今からイーブンな立場で要求しあうことが大切だと思う。曜一朗なら、DFの背後のスペースを狙っていて、そこでボールが出てこないのなら『パスを出してくれ』と要求できるような関係性を築けていることも大切だ。香川と本田がけがで試合に出られない不測の事態も起こりえる。相手にマンマークをつけられて、2人の良さが消される、という状況で、違う選手のストロングポイントも出せる準備はしておいてもいいはずだ。
ザッケローニ監督は3バックをやりたいと話していたが、実際に試合で試す機会はほとんどなかった。チームとしてのオプションはない、といえばない。だからこそ、曜一朗、大久保、または学の良さを引き出せるような環境にしておくことは重要だと思う」
香川と本田という両エースに依存してきたザックジャパンだけに、2人が好調ならチームもうまく機能するだろう。だが、ダブルエースに不測の事態が起こった場合は、依存度が高いからこそ、もろ刃の剣となりうる。サッカーの世界は負傷がつきものだ。コンディションが上がり切らなければ、相手のマークや対応で消されることも起こりうる。その時に柿谷や、ジョーカー役の大久保、斉藤の持つ打開力や決定力を最大限活用できるような準備を進めることができるのか。
大会初戦まで残り2週間。ザッケローニ監督のチームマネジメント力と、開幕までの準備期間の動向に注目が集まる。城福監督は、最後にこう付け足した。
「過去の大会以上に、グループリーグ突破の期待が大きい選手たちが集い、イタリアというサッカー先進国から来た指揮官がチームを率いる。彼らが奏でるハーモニーは、僕も心から楽しみにしている」
そう語る表情は、クラブを率いる指揮官の“それ”ではなく、ワールドカップという祭典に胸を躍らせるピュアなサッカー人そのものだった。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
※ワールドカップ期間中、サッカーマガジンゾーンウェブが記事内で扱うシーンやデータの一部はFIFAワールドカップ?公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』で確認できます。
詳しくは、「LEGENDS STADIUM 2014 – FIFAワールドカップ公式動画」まで