知将・城福浩監督の鋭い視線 ザックJAPANが抱える2振りのもろ刃の剣

 城福監督は12年、J2甲府の監督に就任すると、一年目に24戦無敗の記録をつくってJ2優勝とJ1昇格を達成した。昨季は、限られた戦力ながらもJ1残留に導いている。その手腕から「プロビンチアの星」とも称されるJリーグ屈指の知将は「本当の危機感が芽生えるような強い対戦相手と、W杯までの準備期間に戦わないという選択が吉と出るのか、どうか」と言い、鋭くこう分析した。

「前回の2010年南アフリカW杯で岡田武史監督が率いた日本代表は、大会前に強豪と戦って、チームとして腹がすわった。世界との戦い方を選手と共有し、このままでは駄目だ、ということでサッカーの形を変えた。

一方で、今大会と前回とのチームには違いも存在する。それがビッグクラブでプレーしている選手の数だ。現代表には、長友佑都(インテル)、香川真司(マンチェスター•ユナイテッド)、本田圭佑 (ACミラン)のように、日常的に大きな重圧の掛かる場面を経験している選手がいる。彼らは『W杯だけが特別なプレッシャーの掛かる試合ではない』というぐらいの精神状態で日々を過ごしているのだろう。そういったクラブで培ってきたことは、間違いなく日本サッカーの進歩につながっていると思う。開幕直前の時期に、親善試合で強国と戦わずとも、ワールドスタンダードは彼らの中に染み付いているといえる。

だが、このマッチメークが本大会での成功に向けてプラスなのかは、正直分からないところではある。もしかすれば、それがもろ刃の剣になるかもしれない。そうならないためには、親善試合の相手が偏ることによる、メリットとデメリットの両方をしっかりと認識しておくべきだろう。戦力で見劣りする相手との対戦は、自分たちのサッカーを確認できるというメリットがある。ただし、強い相手と対戦したときに得られる、そのサッカーができなかったときの対処法や、オプションの準備の機会を失っていることも知っておかなければならない。それを認識することで、大会本番までの準備もきっと変わってくるはずだ」

6月15日のW杯1次リーグ初戦でコートジボワールと激突するザックジャパンだが、今年に入ってからのマッチメークには指向性が透けて見える。3月 5日はニュージーランド、5月27日の国内壮行試合はキプロス、そして、米国合宿中に行われる3日のコスタリカ、7日のザンビアという具合に、明らかな格下の相手を選んできたのだ。

 

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