知られざるMLSの世界 シアトル・サウンダーズFCが掲げる“ファンと共に”というブランド

サッカー不毛の地に根付いたクラブの成長戦略

 かつて、「サッカー不毛の地」と呼ばれたアメリカ。しかし、国内リーグのメジャーリーグサッカー(MLS)は、今や観客動員数、選手年俸ともに、世界トップクラスへと成長を果たした。その中でも特に、突出した観客動員数で注目を集めているのが、緑豊かな森林に囲まれ、“エメラルド・シティー”の愛称で親しまれている街のクラブだ。MLSに加盟してわずか6年、著しい躍進を遂げるシアトル・サウンダーズFCのCOO、バート・ウィリー氏が語る、経営術、成長戦略とは――。
「私たちは常に、自分たちの存在価値を意識していま す。シアトル・サウンダーズFCが何を提供できるのか、サウンダーズというブランドがどう見られているのか、どう感じてもらえているのか。クラブの方向性を決める時、必ずここに立ち返ります」
 昨夏よりクラブのCOO(最高執行責任者)に就任したバート・ウィリー氏はこう語った。
 シアトルといえば、緑豊かな自然のほか、世界最大のソフトウエア会社であるマイクロソフト社や、日本でもおなじみのスターバックス社、アマゾン・ドット・コム社が誕生した地としても知られる。スポーツファンならば、かつてイチロー選手が所属していたことで有名なシアトル・マリナーズ(MLB)や、2年連続でスーパーボウルに進出(2014年は優勝)したNFLのシアトル・シーホークスを頭に描いたかもしれない 。
 だが今、シアトルっ子を魅了してやまない緑と青が、その存在感を増してきているのはご存じだろうか。シアトル・サウンダーズFC、09年よりMLSに加盟した、サッカーの新興クラブだ。
 MLSのリーグ平均観客動員数が約1万9000人であるのに対して、サウンダーズは約4万4000人、シーズンチケット保有者が約3万5000人と、驚異的な数字をたたき出している。そこには、決して偶然ではない、確かな戦略に裏打ちされた狙いがあった。

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