宮本恒靖が語る決勝トーナメントの展望 「ベスト16に勝ち上がるのと、ベスト8より先に行くのは全く違う世界」
ブラジルは“チームの軸”にメスを入れられるか
ブラジル、ドイツ、アルゼンチンなど優勝候補と目されたチームは、決勝トーナメントまで順当に勝ち上がった。開幕前、宮本氏は「優勝はブラジル」と予想していた。だが、大会が始まってブラジルの戦いぶりを見ると、その考えに変化が起きているという。
「ブラジルはそれほど良くないですね。ここまでの試合はネイマールの個人技で勝っているところが大きく、チームとしての強みはあまり出せていません。オスカル、フッキ、パウリーニョといった選手の調子も上がっていないようです。最終ラインのチアゴ・シウバとダビド・ルイスのところで踏ん張ってはいますが……。チリに勝てば、次はコロンビアvsウルグアイの勝者と当たります。今のブラジルの状態だと、コロンビアが勝ち上がってきたら、危ないかもしれません」
宮本氏はブラジル改革のカギを「パウリーニョのところを入れ替えられるか」だと見ている。パウリーニョはブラジルの攻守の軸で、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督の信頼も厚い。ただし、今大会では明らかに調子を落としている、チームの軸にメスを入れられるのか――。“フェリポン”の決断が注目されるところだ。
初戦でポルトガルを5-1で一蹴したドイツは、2勝1分でグループリーグを1位で通過した。ただし、試合内容はポルトガル戦を除けば、ガーナとは2-2の引き分け、アメリカにも1-0の辛勝。ドイツに関して宮本氏の見立ては「すごく良くはない」というものだった。
「大きな問題点は見つかりません。フィリップ・ラームがアンカーとして効果的にプレーをしていますし、ルーカス・ポドルスキー、バスティアン・シュバインシュタイガー、ミロスラフ・クローゼなどバックアップも充実している。控えの選手が出て来ても戦力が落ちないのは大きな強みでしょう。ただ、ネックはサイドバック。ジェローム・ボアテング、ベネディクト・ヘーベデスは本来センターバックの選手で攻撃力不足は否めません。まだ先制されてはいないので、決勝トーナメントで先制されたときに、どのように戦うのかは不安材料です」
アルゼンチンに関しては、世界ナンバーワンプレーヤーのリオネル・メッシが試合を決めるゴールを連発している。メッシへの依存度の高さは気がかりだが、宮本氏はポジティブに見ている。その理由は「組み合わせ」にある。
「1回戦はスイスですし、準々決勝もベルギーとアメリカの勝者なので、他の国に比べれば、調子を上げていく時間がある。メッシはボスニア・ヘルツェゴビナ戦、イラン戦では中盤まで下がることが多く、攻撃の停滞を招いていましたが、ナイジェリア戦ではかなり改善されていました。メッシの試合を決める力というのはやはり別格ですし、チームとしてのパフォーマンスが上がってくれば、チャンスはあるでしょう」