W杯躍進の鍵を握る「5レーンの攻防」 過去5大会で日本が戦術的に完敗した2試合とは?

日本が劣勢を強いられた左サイドのレーン

 ちなみにフィールドを縦に5分割する見方は、「5レーン理論」として近年知られるようになったが、2010年の段階で当時のモアテン・オルセン監督率いるデンマークは、明確に「5レーン」を意識してプレーしている。こういう用語は現象の後追いなので、8年前のデンマークがそれを使っていても、なんの不思議もない。まだ、名前がついていなかっただけだ。

 先に記憶に新しい2014年大会のコートジボワール戦から見ていくと、コートジボワールのフォーメーションは4-2-3-1で、5レーンには1トップと2人のセンターバックを除く7人が入っていた。一番外のレーンは2人ずつ(サイドハーフとサイドバック)、あとは1人ずつの配置だ。

 対する日本のフォーメーションも4-2-3-1だが、守備時の形は4-4-2だった。2トップ(FW大迫勇也と本田)は相手のセンターバック2人をマークしているので、5レーンを埋めているのはMF4人とサイドバック2人の計6人である。つまり、コートジボワールに対して1人少ない。

 コートジボワールのフリーマンは右ボランチのMFシェイク・ティオテ。ティオテがコートジボワールから見て右から2つめのレーンで攻撃の起点になっている。日本は左サイドハーフのMF香川真司が一番外のレーンから内側へ移動してティオテにプレスするのだが、そうすると外側のレーンを上がってくる右サイドバック、DFセルジュ・オーリエがフリーになる。

 さらにコートジボワールの右サイドハーフ(FWジェルビーニョ)は、対峙するDF長友佑都を引き連れて内側のレーンに移動するので大外のレーンががら空きとなり、オーリエが高い位置へ進出。守備が得意でない香川が、相手の起点となるティオテと大外のオーリエの2人に対応しなければならない構図にした時点で、コートジボワールの戦術的な優位が決まっている。

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