銀河系軍団レアルでも“規格外”の英雄 今も語り継がれる伝説ボレー弾と変則システム

 

芸術的なボレーシュートでCL制覇に導く

 そんなジダンの“規格外ぶり”は、レアルの本拠地サンチャゴ・ベルナベウのピッチでも描かれた。レアルの当時のフォーメーションは「4-4-2」。しかし、このシステムは数字で表現しきれない“非対称性”を描いていた。

 フィーゴが右サイドに張る一方で、本来左サイドハーフの位置に入るはずのジダンは自らの得意ポジションであるトップ下に流れる。つまり左サイドにぽっかりとスペースが空くわけだが、ここで生きたのは1列下、サッカー史に残る攻撃的左サイドバックのDFロベルト・カルロスだった。ジダンの空けたスペースを爆発的なスプリントで疾走し、何度もチャンスを創出。当時指揮官だったビセンテ・デル・ボスケが与えた自由、そして黒子役としてジダンを補佐し続けたMFクロード・マケレレらの献身によって成り立った奇跡のバランスだった。

 そんなチーム、そしてジダンの完成形と言えたのは、01-02シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝だろう。レバークーゼンとの決戦は圧倒的優位の下馬評を受けながらも、前半途中まで1-1の同点に。ここでジダンの天賦の才が爆発する。前半44分、左サイドを駆け上がったR・カルロスのクロスが高く浮き上がる。ただでさえ扱いづらい軌道を描いたボールに対して、ジダンは最も難易度の高い選択を決断した。

 利き足ではない左足での、ダイレクトボレーだった。

 まるで時間が止まったかのような優雅な一撃は、ニア上を打ち破る。ジダン本人も雄叫びを上げた芸術的なゴールによって、“白い巨人”は欧州王者の称号を奪還したのだった。

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