「わざと右にフェイントをかけた」

　その勝負どころで、安部は勝負を懸けた。白井がゆっくりとした助走でキックに向かう時に、自ら駆け引きを仕掛けたという。

「助走の感じで（GKから見て）左に飛ぶことは決めていたんですけど、わざと右にフェイントをかけたんです」

　キックの瞬間に左に大きく飛ぶと、コースを狙った一撃を見事に弾き出した。どうしても止めたい1本を、この全国の舞台に持ってきた。中学から高川学園に通う安部は「苦手なものを克服しようと思ってやってきた6年間で、そうやってきて良かったと思います」と笑顔を見せた。

　チームは2回戦に進出し、見事に“年越し”。勝利をもたらした守護神は、少しはにかんだような笑顔で「大事なのは試合なので、（1月）2日に備えたいです」と決意の言葉を残していった。

【了】

轡田哲朗●文　text by Tetsuro Kutsuwada

フットボールゾーンウェブ編集部●写真　photo by Football ZONE web