J1札幌がペトロヴィッチ新体制に託す理由 気鋭の社長が狙う「次のステップ」への挑戦
「プロビンチャはスピード感を速めなければ…」
「我々のようなプロビンチャ(地方クラブ)が、親会社を持つビッグクラブと互角に渡り合う、さらには追い抜いていくには、あらゆる判断や行動のスピード感を高めていかなければ果たせない。他クラブよりも時間的感覚を速めていかなければ勝てないし、世界には近づけない。限られた予算を生かしていくために、あらゆる行動を一般的な感覚よりも前倒しでやっていく必要がある。
そして折しも、次のステップに進もうという、そのタイミングでミシャがフリーだった。これはもう、オファーしない手はない。この世界では、ハイレベルな監督はそうそうフリーにならないのだから」
ただし、加速度的なマネジメントを行っていく一方で、「ミシャのチームが形になるまでには、ある程度の時間が必要なことは分かっている」とも語っており、広島や浦和をJ1上位に導いた「確かな実績がある」だけに、中長期的な視野で上位進出を目論んでいるようだ。
また、トップチームだけでなくアカデミーへの影響も「間違いなく大きい」と、プロビンチャのトップは考えている。「具体的に何かをやるという予定はないけれど、放っておいてもアカデミーの監督やコーチ、もしかしたら選手たちもミシャのトレーニングを熱心に見にくるでしょう。どんなトレーニングをするのか、俺も気になるからね」と、“ミシャメソッド”がさながらウィルスのように、クラブ内で自然に広がっていくことを期待している。
2018年から始まるペトロヴィッチ体制での札幌の戦い。地方クラブを東欧の指揮官がどのように押し上げていくのか、注目が集まる。
【了】
斉藤宏則●文 text by Hironori Saito
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images