Jの頂きを目指して ジュビロ磐田の躍進を支えた地道な歩みと名波監督の「イズム」

“絶対的使命”を課されるなかで成長を追求

 名波監督は、就任と同時に「攻守にアクションを起こし、人もボールも動くアグレッシブで攻撃的なサッカー』を標榜し、長期的なビジョンで一から立て直しに着手。チーム全体の底上げを図るべく、勝敗だけに拘泥せず、段階を踏んだチーム作りと選手育成を続けてきた。結果の責任が問われる立場で、このようなやり方を貫くのは簡単なことではない。しかし、名波監督はJ1昇格や残留という“絶対的使命”が課せられたなかでも、ゲーム内容や選手・チームの成長を重視してきた。

 3年ぶりにJ1復帰を果たした昨季、第1ステージは4バックをメインシステムに戦って8位。ただ、3バックを採用した第2ステージは戦績が落ち込み、残留争いに巻き込まれた。それでも、指揮官が12試合で3バックを使い続けたのは、システムに対する汎用性を持たせる以上に、目指すサッカーの土台を固めるためでもあった。

 磐田の3バックは、基本的に5バックにならず、両ウイングバックが高い位置を保つことがコンセプトだ。3人で守るため、横のスライドやサイドの選手を前へ押し出す縦のスライドに関して、4バックよりも速い判断と動き、意志統一が必要になる。構築を進めているサッカーは攻守一体で、良い守備は良い攻撃につながる――。身につけば、ボールも滑らかに動くようになり、素早く連動する守備を選手たちに習得させる狙いがあったのだ。

 そうした“鍛練”の成果にプラスして、2017年はキャンプから「横ズレ・縦ズレ」をしながら中を締める意識、プレーを強化したことで、相手に縦パスを入れられる回数が激減した。さらに、目指すサッカーの軸であり、J2時代から取り組んできている、後ろに下がらず、攻守で前へ前へ仕掛けていくアグレッシブなプレーが選手にも定着。序盤戦こそ波はあったが、守備面が大きく崩れることはシーズン最後までなかった。

 

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