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フランス黄金期の象徴ジダン 絶滅危機の“トップ下”で輝いた完全無欠の司令塔
ライバルを苦しめた“悪魔”のキープ力
しかし、ジダンにそのような心配はなかった。強靭な体躯を持つジダンは、守備時にはセントラルハーフとして戦うことができる。そして、相手のプレッシングにとってジダンという存在は“悪魔”でしかなかった。なぜなら、プレッシングによってボールを持たせない、あるいは奪い取るということが設計図に書き込まれているのに、ジダンは悠々とボールをキープして時間を作り出してしまうのだ。
ジダンに2人以上の選手をぶつけていては、組織が崩れてしまう。しかし、組織を重視するとジダンにボールを持たれて良質なラストパスを出されてしまう。セリエAの対戦チームは、そのパラドックスに苦慮し続けることになった。
ユベントスでは、“デル・ピッポ”の愛称を持ったデル・ピエロとフィリッポ・インザーギの2トップを背後から操り、5シーズンで2度の優勝。トヨタカップでクラブ世界一に輝くと、UEFAチャンピオンズリーグでも2回の決勝進出を果たした。貴婦人の愛称で知られるゼブラ軍団の中心には、常にジダンの姿があった。
そして、キャリア前半で最大のハイライトが98年の地元開催フランスW杯だろう。当時のエメ・ジャケ監督はほとんどのポジションに2人の選手を選んでいたが、ジダンのポジションだけはバックアップがいなかった。それは、ジダンの代わりなど誰もできないから。しかし、ジダンは時に発してしまう“狂気”によってチームに非常事態をもたらしてしまう。