【サッカー分析講座③】ポゼッション率が高いチームが勝つとは限らない

 最近の海外のサッカー中継や新聞、雑誌でポゼッション率というデータについて語られていることに気が付いただろうか。

「ポゼッション= Possession」というのは所有、占有という意味だ。サッカーの試合でポゼッション率と言えば、それぞれのチームが試合中にボールを保持している割合を示す。保持している「時間」で見る場合と「プレー回数」の場合があるが、数値的にはほぼ同じだ。

 そのデータは簡単なシステム(場合によってはストップウォッチ)で計測する。例えばAチーム対Bチームの試合を行う場合、Aがボールを保持している時は右手に持つボタンを押す。同じAチームの選手がキープしている限りはそのままだが、ボールが相手チームに移った瞬間、左手に持つBチーム用のボタンを押す。こうして取ったデータを15分毎、前後半毎、あるいは試合毎に割合で示したものがポゼッション率だ。

 50%対50%であれば、双方のチームが同じ時間だけボールを保持していたことになるわけだが、60%対40%になった場合、それぞれのチームで見ると一方が10%ポゼッション率が増え、もう一方が10%減少するわけだが、合わせて20%の差となると試合を行っている方はかなり力の差を感じるものだ。90分のゲームにおいて片方が90分×60%=54分ボールを支配し、もう一つのチームが残りの36分、つまり18分間多くチャンスを作る可能性が多いということを示す。

 実際のプレー時間はアクチュアルタイムと呼ばれ、別の指標があるがそれは別の機会に紹介したい。18分間長くボールを持っていれば、それだけチャンスも多くピンチになる可能性も低いはずなのでポゼッション率が高いチームが勝つ確率が高いと思う人が多いはずだ。しかし、ポゼッション率が高いチームが必ず勝つかというと必ずしもそうではないのがサッカーの面白いところだ。

 少し古いが2009年シーズンポゼッション率の差が大きい10試合を取り出し、試合結果と比較してみた。何とポゼッション率の高いチームが2勝3敗5分けと負け越している(※表を参照)。

 最もポゼッション率に差があった第10節の横浜F・マリノス対京都サンガFCの試合のポゼッション率は67.8%:32.2%、時間にするとマリノス61分、京都29分とマリノスが倍以上長くボールをもってプレーしていたことになる。しかし試合結果は京都が2対0で勝利した。次回は一見ジャイアントキリングに見えるデータの秘密に迫ってみたいと思う。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

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