日本代表FW浅野が苦闘の中で見出した“突破口” ブンデス1部初得点に見えた成長の跡とは
得点シーンに見えた駆け引きの妙
だが、最近はがむしゃらさの中に落ち着きが見られることが多くなった。一瞬の駆け引きで相手から離れる、裏を取る、あえてマークに来させる。そんな駆け引きを、タイミング良く仕掛けるシーンが増えてきていたのだ。
この得点シーンでも、そうした浅野の動きの良さが見られた。シュートを打とうとするゲントナーに気がいったサネが視線を浅野から外した瞬間に、スッとそこから離れながらオフサイドにならない位置へと移動。ゲントナーがその動きを見て、そこからスルーパスが出てくる、あるいはそのままゲントナーがシュートを打つならばこぼれ球に詰めるというイメージを頭の中で描き、スタンバイができていた。周りの選手全員が、シュートが放たれた瞬間に足を止めていたなか、浅野の頭は回転していた。
シュート自体は簡単だったかもしれない。だが、そこに至るまでの連続したプロセスから、浅野がドイツの地で培ってきた成長の跡を感じた。
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中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images