来季ファン・ハール監督が率いるマンチェスター・Uの最高と最悪のシナリオ

2年連続で欧州CL出場権を逃せば、ダメージは計り知れない

 先に述べたが、最高のシナリオは、ファン・ハールが、選手をきっちり掌握し、契約期間の3年間でマンチェスター・Uをプレミア、欧州CLの2冠を狙えるファーガソン時代のチームに戻し、助監督のギグスに政権交代することだ。

 しかし最悪のシナリオは、豪腕が仇となり、チームが空中分解して不振に陥るケース。その上ルーニーとの確執が生まれ、それが英メディアの格好の餌食となれば、モイーズに続き、2季連続でシーズン半ばにしての監督更迭もあり得る。

 そこで悪い流れを引き継いだギグスがさらに不振に陥れば、マンチェスター・Uは最有力の次期監督候補まで失うことになる。

 英国にはAnything can happen in football(サッカー界では何事も起こりえる)という表現がある。良い例をマンチェスター・Uの歴史から例えれば99年トレブルがそうだろう。

 しかし当然その逆もある。例えば2000-01年シーズンで欧州CL準決勝まで駒を進めながら、放漫経営がたたり、そのわずか3年後の2003-04年シーズンにチャンピオンシップ(英2部リーグ)へ降格した強豪リーズの恐るべき大転落だ。

 その後もリーズの地盤沈下は止まらず、2006-07年シーズンにはリーグ1(英2部リーグ)に降格。現在も名門の不振は続き、今季もチャンピオンシップで勝ち抜けず、11年振りとなっていた来季のプレミア復帰はまたも実現しなかった。

 もちろん、降格などという大転落は、マンチェスター・Uの場合、ほぼあり得ないが、2年連続で欧州CL出場権を逃せば、そのダメージはリーズの降格に等しい大きなものになるだろう。

 現時点では補強前でもあり、不確定要素もまだまだ多いが、ファン・ハールの命綱もそこであり、欧州CL出場権確保の4位以内ということになることだけは間違いない。

【了】

森昌利●文 text by Masatoshi Mori

 

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