天才バッジョを次々と襲った悪夢と逆風 失意を希望に変え続けたファンタジスタの輝き

 

ブレシアでピルロと刻んだ伝説のゴール

 MFデメトリオ・アルベルティーニからのピンポイントクロスに、ゴール前の右サイドに抜け出したバッジョは右足ボレーで合わせる。大会で絶好調のフランスGKファビアン・バルテズが全く反応できず見送ったボールは、ファーサイドのポストをかすめるようにして枠外へ。後に「ミスと言えるのは完璧にジャストミートしてしまったこと」と振り返った一撃は決まらず、3大会連続でバッジョのW杯はPK戦にもつれ込んだ。

 そして、1人目のキッカーはバッジョ。前回大会の悪夢がよぎるなかで、そんなことはどこ吹く風と冷静にシュートを決める。しかし、イタリアは5人目のMFルイジ・ディ・ビアッジョのシュートがクロスバーを直撃して失敗となり、ここで敗退となった。試合後、誰よりもディ・ビアッジョの心情を理解するバッジョは、「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」という言葉をかけた。3回のワールドカップ全てでPK戦のキッカーを務め、3回連続で敗退するという悲劇に見舞われたバッジョは、「PKを決めても誰も覚えていないが、外したら誰もが忘れない」という言葉を残した。

 フランスW杯を終えると、バッジョはかつて移籍話が頓挫したインテルへ移籍した。しかし、マルチェロ・リッピ監督との確執、膝の負傷と逆風が続き、その実力を発揮しきれなかった。2002年の日韓W杯を目指すバッジョは、00年に再び中堅クラブのブレシアに移籍した。そこでは、後に“マエストロ”と名を馳せる若き日のMFアンドレア・ピルロとも共闘。01年には、今でも伝説のゴールと語り継がれる古巣ユベントス戦でのゴールを生み出した。

 ハーフライン付近からピルロが背後に出した浮き球パスに抜け出したバッジョは、後ろから飛んでくるボールを右足でシュートフェイントをかけながらトラップして飛び出してきたGKをかわし、ゴールに流し込んだ。今でも、最も美しいゴールの一つと呼ばれ続けている。

 

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング