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【サッカー分析講座①】なぜ中田英寿氏はかつて日本の“エース”と呼ばれたのか データから“答え”を導くことの難しさ
探したい答えとそれを表すデータは必ずしも最初から一対ではない
熟練した指導者は、「選手は生ものだ」とし、その選手が様々なコンディション、チーム事情のもとでプレーするのだから、試合そのものも生もので同じ状況は決して無いという。それは正しい。
しかし、「選手も試合そのものも生ものだが、チームの哲学に則ってそのスタイルを確立するために日々練習に励んでいるので、自分たちの理想の試合を行う努力をしている」と言い換えることもできるはずだ。つまり多少メンバーの入れ替えがあっても同じ指導者のもと、定期的なスケジュールで同一ルールの競技を行う以上、ある程度はっきりとした傾向が出るということだ。
しかし、本当に難しいのはここからだ。何故なら探したい答えとそれを表すデータは必ずしも最初から一対ではないからだ。自分の仮説を検証するために様々なデータを組み合わせ、確認する必要がある。そしてそこで出てきた答えは必ずしも自分の仮説と同じでない場合だってある。
そういう時には自分の仮説の妥当性や使用したデータの是非を問う必要がある。大事なことは答えそのものではなく、その答えを導くための考え方のプロセスの合理性と納得性であり、そのためにデータという客観的事実が有用だということだ。
一つの例だが、2002年のワールドカップの前ある情報番組でデータを出して説明してほしいとの依頼を受けた。
「中田ヒデ(中田英寿)選手は日本のエースと言われますが、彼がエースと呼ばれるデータを出して下さい」
最初に考えるべきことは、質問に含まれている内容で不明確な部分があればそれを明確にすることだ。ここでは「エース」という定義を明確にすることだ。その作業を行わないことには求められているデータを出すことが不可能になる。