浦和FW武藤を突き動かす“先輩”の存在 ACL決勝で抱く野心「期待に応えたい」

「9番らしくない9番」が“全開宣言”

 9番初年度となった昨季、武藤には大きな悔いが残った。リーグの年間タイトルを懸けた鹿島アントラーズとのチャンピオンシップ第2戦、1点を取れば浦和が優勝という後半アディショナルタイムにビッグチャンスが訪れた。DF槙野智章がゴール前に頭で落としたボールに飛び込んだ武藤はゴールに押し込むべくシュートを放ったが、無情にもボールはクロスバーを越えた。

 試合後の武藤は「結果的に最後の試合で勝たせるプレーヤーではなかったというのが、すごく残念だし、『9番』の仕事としては物足りない。最後の部分で成長できていないと思う」と、悔し涙をにじませながら取材に応じていた。それから約1年が経ち、大会こそ違うもののビッグゲームでチームを勝利に導くチャンスが訪れた。

 武藤は常に献身的にボールに絡みチーム全体に貢献する、ある意味では「9番らしくない9番」かもしれない。それでも、ここ一番で勝負を決め、チームを勝利に導く存在であることは自身に課してきた課題の一つだ。

「ホームで全開のところを見せたい」と話す献身的なストライカーは、チームの勝利を最優先にしつつも、ヒーローの座を虎視眈々と狙っている。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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