「パス」に込められたメッセージ ブラジル戦データに見る日本代表の狙いと現在地

明確に示されたハリル流と精度の低さ

 ブラジル代表のパス数は日本代表の1.76倍、成功したパス数で見ると倍以上だ。もしも日本代表がパス回しによって攻撃するスタイルを標榜していたとすれば、ブラジル代表には結果でも内容でも完敗したことになる。しかし、日本代表を率いるハリルホジッチ監督は、再三ポゼッション率を上げることは勝利に直結しないという趣旨の発言をしている。

 データを見れば、やはり現在の日本代表が縦に速いスタイルを志向していることが窺える。全体のパスのうち、縦パスが占める割合は36.8%でブラジルの27.4%を上回る。アタッキングサード(A3)へのパスの比率はブラジル代表の2.4倍、BOX内へのパスの比率は2.7倍も多い。つまり、日本代表は監督の求める縦に速い攻撃というスタイルを忠実に実行していたのが分かる。

 しかし、3-1という結果を見ても現時点で日本代表のスタイルが通用したとは言えない。それは比率ではなく、成功したパスという絶対数を見れば分かる。成功した縦パス数は103本でブラジルが記録した160本の約3分の2だ。アタッキングサード(A3)への成功したパス数100本はブラジル代表の1.2倍だが、BOX内への成功したパス数はブラジルの8割以下だった。

 つまり、相手のゴールに近いエリアにパスを出す意識は高いものの精度は低い、あるいは相手にプレーを読まれていることを示している。一方のブラジルは、しっかりパスを回し、日本の選手を分散、あるいは崩し、ここぞという時に日本にとって嫌なエリアにしっかりパスを通せていたということを示している。

 特筆すべきはミドルパス(10~25m)の成功率92.1%という数値だ。ショートパス(10m未満)の成功率も90.8%と高いが、ボールの移動距離が長くなっても9割以上の成功率を維持できるというのは、精度はもちろんのこと、パススピードやパスコースを作る動きも重要になってくる。ブラジルの総パス数の約3分の2を占めるミドルパスの成功率の高さは、3-1という得点差以上に大きな差なのかもしれない。

analyzed by ZONE Analyzing Team

データ提供元:Instat

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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