千葉の水野晃樹が恩師・オシム氏に渡したい“手土産”

喜々として語った水野の才能

 当時は自分よがりなプレーに走っていた。オシム監督からは「おまえが2人、3人抱えている時は、他の選手が空い ているだろ」と忠告されることも少なくなかった。だが、自分の力にも自信を持っていた分、素直に受け止めることができなかった。
 しかし、オシム監督は決して彼に嫌気を覚えることはなかった。水野とは市原、甲府、そして今季から再び千葉で時間を共にする小倉勉コーチが、「当時のオシム監督が口にした言葉が今でも印象に残っている」と証言する。状況判断が遅くなる選手には、2通りのタイプが存在する。一つは、周りが見えなくなって判断の遅くなる選手、もう一つはさまざまな選択肢を持った中で迷いが生まれてしまう選手だ。
「水野の場合は後者の方だった。彼にも判断が遅くなるケースが随所に見られた。オシム監督は当時、そのような選手に選択肢が多い中で判断を迷っているの を認めてあげて、そういう部分を伸ばしてあげるべきだとスタッフ陣に熱弁していた。そういう選手は日本の中でもそれほど多くはない中で、水野に関しては、さらに技術もある上にキックの種類もある選手なんだとも言っていた」
 8年前まではボールを持つと、多くの選択肢の中で判断に迷い、最終的には自分の突破力に頼ることがほとんどだった。それゆえにチャンスをつぶしてしまうことも少なくなかった。だが、小倉コーチは、かつてオシム監督が求めていたモノが今の水野には備わり始めているというのだ。
「スピードに関しては、当時のほうがあったと思う。しかし、その分、判断のスピードは速くなっているね。当時よりも明らかにプレーの整理ができているよ」
 過去と現在を知る コーチが復活を予感するように、水野本人もプレーに迷いがなくなったことを実感している。
「年も取ったし、いろいろ経験もしてきて、ゲームの流れを読めるようになってきた。当時は、何が何でも自分でやってやろう、全部勝負してやろうって。周りの状況とか考えずにやっていました。だけど、今は状況判断もできるようになったと思うし、どちらのサイドから攻めた方がいいのか、どのタイミングで上がった方がいいのかとか、そういう部分はしっかりと身に付けられたと思う」

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