「あの時、新たな感覚をつかんだ」 中村俊輔が今明かす、忘れがたい“一本のパス”

“ぎりぎりのパス”の美学

 当時から高精度のキックを武器にしていた中村は、“ぎりぎりのパス”を意図的に出していたと明かす。さらに、自らそのポイントを解説する。

「パスが短すぎても長すぎてもダメ、本当にぎりぎりのところ。距離的には十分届くし、相手の位置も確認済み。そのうえでパスのスピード感が難しい。ポイントは、相手にいかにボールを取れそうと思わせるか。ボールカットを狙わせないといけないですからね」

 味方と相手の位置、ボールの長短と緩急を全て計算し、絶妙なコースに通して大チャンスを演出したパス。中村の“思い出の一本”には美学が詰まっている。

「パスが緩すぎると相手に簡単に取られますし、逆にパスが速すぎると相手はボールに反応しないで、初めからFWの方に寄せるので、FWがプレッシャーを受ける形になる。その微妙なさじ加減が重要で、あの時のパスで新たな感覚をつかみました」

 当時21歳の中村はこうして進化を遂げると、この試合からわずか3カ月後の2000年2月13日に行われたAFCアジアカップ予選シンガポール戦でA代表デビューを飾った。その後の活躍ぶりは多くの人が知るところである。

 

中村俊輔インタビュー連載「天才レフティーの思考」

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【了】

大木 勇(Football ZONE web編集部)●文 text by Isamu Oki

神山陽平●写真 photo by Yohei Kamiyama

 

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