「あの時、新たな感覚をつかんだ」 中村俊輔が今明かす、忘れがたい“一本のパス”
「あの当時流行っていた」パスとは?
センターサークルの右付近でボールを受けた中村は、トラップで一瞬の間を置くと、虚を突くようにすぐさまキックモーションに入って左足を一閃。約35メートルの低弾道パスを対角線上に打ち込み、相手DF間に走り込んだ平瀬の左足にぴたりと通す。トラップはやや浮いたものの、そのままエリア内に侵入した平瀬が冷静にゴールを決め、これが決勝弾。試合はその後、中村が代名詞のFKを沈めて3-1で逆転勝利し、2大会連続6回目の五輪出場を決めた。
なぜ中村は、平瀬に通したパスを挙げたのか。そこには、「余裕を持ってパスを通すのではなくて、あえて味方に届くかどうかというぎりぎりのボールを出す」という明確な意図があった。“ぎりぎりのパス”の真意はこうだ。
「相手もぎりぎり取れそうだと思って、思わず反応してしまう。でも、実際にボールを取ろうと思ったら、無理だと判断して体勢を立て直すけど、反応が遅れた分、そのパスがそのまま通る」
実際、中村が平瀬へ出したパスの際には、相手が反応し、前に出ようとするも諦め、一瞬の遅れが生じた。その結果、平瀬はトラップと同時に相手と入れ替わり、ゴールを陥れることに成功している。
「そういうぎりぎりのパスは、上手く通れば一発で味方FWと相手DFが入れ替わって大チャンスになる。それがあの当時は流行っていましたね」