なぜミキッチはサポーターに愛されたのか? 広島の“大天使”が人々の心に遺したもの
「再び広島を強くするために力を尽くしたい」
現在、ミキッチはFWパトリック、FWアンデルソン・ロペス、MFフェリペ・シウバに次ぐ“4番目の外国人選手”という位置づけになっている。その状況を冷静に判断し、ミキッチは退団の意思を固めた。もし7月1日の第17節・浦和戦で怪我をせず、ずっとプレーできていれば広島もミキッチも大きく変わったのではないか。そう思うと胸が締めつけられる。
それでも、彼はこんな言葉を口にした。
「今の僕は、広島の残留に向けて全力を尽くしたい。たとえ試合に出られなかったとしても、自分にできることをやり続けたい。そして、広島のJ1残留を見届けた上で、クラブを去りたいんだ。僕はこれほどの長きにわたってプレーできるチャンスを与えてくれた広島に感謝している。そしていつの日か違った立場で戻ってきて、再び広島を強くするために力を尽くしたいと思っているんだ」
「それは監督として?」
日本語で問う。9年もの時間は、彼に日本語を学ぶ機会を与えていた。
「はいっ!」
通訳を通さず、間髪をいれず、ミハエル・ミキッチは答えた。笑顔ではなく、真剣な表情で、広島の大天使は答えた。
【了】
中野和也●文 text by Kazuya Nakano
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images