ケルン時代の長澤で思い出す姿 チームの武器を磨き、“個”を輝かせるためのトライ
人柄もプレースタイルも愛された長澤、ブンデス1部昇格とともに深めた苦悩
長澤和輝はケルンファンに愛されていた。
ブンデスリーガ2部で優勝し1部昇格を決めた13-14シーズン、日本人MFはチームに欠かせない存在になっていた。守備ではいつでも貪欲に相手ボールを追い回し、攻撃では相手守備の間に生じるスペースに入り込み、パスを引き出して起点を作っていく。そんなプレー面での魅力に加え、オープンで人当たりの良い人柄はお祭り好きなケルンの人々のシンパシーを呼び、さらなる成長をと期待を寄せられていた。
だが、1部での戦いでは残留が目標となる。チーム全体で徹底的に守備を頑張り、攻撃は前線で体を張り続けるFWに頼るサッカーを基本線としてきた。長澤は膝の怪我もあり、なかなか出場機会に恵まれなくなっていった。時折出場することがあっても、ボールはどんどん頭上を越えていくばかり。それでも、目は常に先を見据えていた。
「焦ってもしょうがないんで。いつも通り、自分のやれることをしっかりやって」
思い出す一幕がある。
長澤が出場したある試合後、「チームが苦しい時間帯には、長澤選手が見せる中盤でワンクッション挟むプレーがもっと生きてくるんじゃないだろうか?」という質問をしたことがある。FWにボールが収まる時のチームは、縦へ縦へと勢いをもって押し込むことができても、相手が対応しているのにロングボールばかりになってしまうことが、往々にしてあったからだ。
長澤はまっすぐに私の目を見て、逆に尋ね返してきた。
「今日はそんな感じに見えました?」
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