“輸入型リーグ”のイングランドが育成大国に? “輸出型”へ傾く日本の課題とは
イングランド代表強化につながるかは別問題
プレミアリーグは選手の「輸入型リーグ」だ。金回りがいいので、自前で育成するよりも外から獲ってくる方が手っ取り早くチームを強化できる。岡崎慎司の所属するレスターが優勝した時、予算の少なさとリクルートの上手さが称賛されたが、予算規模でプレミア下位だったレスターでも、他国のリーグへ行けば十分ビッグクラブなのだ。プレミアは選手補強が強化のカギで、毎年の優勝予想は補強の動向を見れば、だいたい外れないリーグである。だから、各クラブがあまり育成に力を入れている印象はなかったし、実際にユース代表も強くなかった。
イングランドが昔から育成を軽視していたわけではない。最も早くユースチームを立ち上げたのはチェルシーで、その頃はジミー・グリーブスを中心に史上最年少のアタックラインを組んでいた。マンチェスター・ユナイテッドは“ホーム・グロウン”であるデイビッド・ベッカム、ポール・スコールズ、ライアン・ギグスたちが黄金時代を築いている。ただ、プレミアが「輸入型リーグ」になったので育成はさほど重要ではなくなり、下部組織で育った若手も有名外国籍選手にレギュラーポジションが占拠されていて、出番がない状況が続いていたわけだ。
イングランドとは逆に「輸出型リーグ」となったフランス、ポルトガル、ベルギーは有力選手がほとんどプレミアやリーガ・エスパニョーラなどに移籍してしまうので、国内リーグのレベルは停滞したが、コンペティティブなリーグで実績を積んだ選手たちで構成される代表は強くなった。
プレミアリーグでもイングランド人の若手が台頭するようになってきたが、それでも外国籍選手の壁は厚い。育成年代大躍進のイングランドが、それをA代表強化に結びつけられるかと言えば、楽観はできないと思う。彼らには“今”経験を積ませる必要がある。有望な若手を抱え込まず、海外へリースするなど、「輸入型」のプレミアリーグが「輸出型」としても機能するかどうかにかかっている。