ドイツ&J2経由で日本代表初参戦へ 「恩義がある」浦和で長澤が切り拓いた“輝ける場所”

転機は監督交代、ACLで示した球際の強さ

 確かに、ペトロヴィッチ監督のチーム戦術で、長澤をストッパーで起用する采配には疑問は大きかったが、ボランチでもシャドーでも特性が生きていたとは言い難かった。ボランチにはサイドチェンジによるゲームメイク能力が要求され、シャドーには高い位置で我慢して味方のボールを待ち、1タッチでの崩しが要求された。そうした時に、監督交代により堀孝史監督がインサイドハーフを置くシステムに変更したのは、長澤にとって大きな転機となった。

 ハリル監督も絶賛したACLでの上海上港(中国)戦がその典型で、特にホームでの第2戦では25回にもわたってデュエルを仕掛けたデータが残っている。

 ケルン時代に屈強な選手たちとの戦いに慣れている長澤は、後ろにアンカーがいる状態で積極的にボール奪取に出て行き、ドイツの緩いピッチで培われた重心の低いドリブルでボールを運んで攻撃につなげる。ハリル監督は「守備も攻撃も本当に運動量が豊富な選手です」と評価し、インサイドハーフを置く4-3-3システムを導入した際には、打ってつけの選手であるという印象を強く持っているようだ。

 メンバー発表会見でもハリル監督は、「ここ4、5試合、それより前は見ていなかったです。ACLの出来で、本当に良いと思いました」と、ここにきて注目した存在であることを明かしている。だがそれは、急成長というよりも能力を発揮できる条件が最近になって整ったという見方が正しいのだろう。

 出場機会のない時期にも「ケルンから戻る時に獲ってもらった浦和には恩義がある」と、妥協せずにトレーニングを続けてきたことが今につながる。上昇気流に乗った長澤は、ハリルジャパンにも新風を巻き込んで、その地位を確立することが期待される。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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