マルセイユ酒井が「狂気のダービー」で触れた“世界” ネイマールを落第させたサイドの攻防
日本代表で最もステータスの高い位置に…
ネイマールはPSGにとって特別な選手であり、ネイマールの活躍でCLを獲ることがカタールの強い要望に違いない。ネイマールには巨大な期待とプレッシャーが圧しかかっている。異常なテンションに包まれるマルセイユのヴェロドロームでの“ル・クラスィク”は、そのプレッシャーが頂点に達する最初の機会だった。その最初のテストに、ネイマールは落第したわけだ。
もし、そのままPSGが敗れていたら、ネイマールは「お前はメッシにはなれない」とメディアから厳しく批判されていただろう。ある意味、ネイマールを救ったのはチーム内での対立関係が噂されるカバーニだった。後半アディショナルタイムにFKを決めて2-2で試合を終わらせている。
勝利を逃したとはいえ、マルセイユはスター軍団をぎりぎりまで追いつめた。PSGとは比較にならないとはいえ、マルセイユの陣容も充実している。FWにギリシャ代表のコンスタンティノス・ミトログルを補強し、MFディミトリ・パイェとトバンのフランス代表組、ブラジル代表のグスタボもいる。酒井はその陣容の中で昨季からレギュラーポジションをがっちりつかんでいるのだから、日本代表の海外組の中で最もステータスの高い位置にいるわけだ。
遺恨、因縁は数知れず、世界で最も陰険なダービー。今季はネイマール、ムバッペのPSG加入によって例年以上に盛り上がり、狂気を秘め、明らかに通常のリーグ戦とは異なる雰囲気だった。この一戦は酒井にとって、ひいては日本サッカーにとっても得難い経験であり財産である。
【了】
西部謙司●文 text by Kenji Nishibe
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images