浦和をACL決勝に導いた長澤のワンプレー フッキ&オスカルも封じた独仕込みの守備力
ACLの“肉弾戦”で輝く長澤の能力
その後、1点を奪った浦和は上海の猛攻にさらされたが、中盤のファイターとして長澤の存在感は絶大だった。自身も「(上海の)パスを出すのが上手い選手には早めにプレッシャーをかけて少しでも選択肢を奪うこと。フッキ選手のようなドリブルが上手い選手には、何人かで潰しにいくこと。状況に応じて正しい守備がある程度はできたからこそ、守れたんじゃないかと思います」と、そのプレーに納得の表情だった。
長澤は専修大学から2014年1月の移籍市場でドイツのケルンに渡った。当時はブンデスリーガ2部にいたケルンだが、長澤の加入から半年後に1部に復帰し、今でもその地位を守っている。しかし長澤は左膝の靭帯断裂という負傷もあり、1部での出場機会は1年半でリーグ戦11試合にとどまった。そこで、昨季開幕前に浦和が完全移籍で獲得し、1年間はJ2ジェフユナイテッド千葉に期限付き移籍。そして今季、晴れて浦和の一員としてプレーしている。
そうした経験が、このACLの舞台で生きた。長澤は「当たりの強さは選手によってそれぞれではあるんですけど、フッキ選手やオスカル選手のような能力の高い選手というのはブンデスリーガにも多くいるので、そういう選手にどうやって対応するのかというのは、経験になっていると思いますね」と、ブンデスリーガで培ったノウハウが強力なタレント揃いの攻撃陣を封じ込める力になったと話す。
浦和のインサイドハーフはMF柏木陽介やMF矢島慎也、MF武藤雄樹といった面々との争いになっている。相手が守備的になることの多いリーグ戦では矢島が重用されている感があるが、肉弾戦の様相を呈すACLでは長澤の持つ能力がより求められているようだ。
決勝はサウジアラビアのアル・ヒラルとの対戦になるが、中東のフィジカルを武器にした相手に対しても、ブンデスリーガ仕込みの能力を持つ浦和のファイターは、その力を大いに発揮してくれるはずだ。
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轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images