“HSVの未来”と認められた20歳FW伊藤 「あれ以上の賛辞はない」拍手が送られた理由とは

岐路に立つ名門、育成型クラブへの転換点

 近年のHSVは、喉元を過ぎた熱さをころっと忘れてしまうのだ。クラブのためにいつでも投資をしてくれるクラウス=ミヒャエル・キューネという大富豪の財布に甘えてしまい、「どうすればブンデスリーガで生き残り、長期的に継続して成功することができるのか」というクラブとしてのあり方を真剣に論じない。それでいて監督には華々しい成果だけを期待するから、チーム作りは常に困難を極め、困ったらまたキューネに泣きつく。昨シーズンも冬にMFワラシ、DFキリアコス・パパドプーロス、DFメルギム・マフライの補強があったからこそ、なんとかなったという背景もある。

 だから選手を育てることができない。将来性を見ないから、才能があってもすぐに他クラブへ放出してしまう。

 最近でのその最たる例が、ドイツ代表MFケレム・デミルバイだろう。一度もちゃんとしたチャンスを与えられないままに昨シーズン、ホッフェンハイムへ完全移籍すると、ユリアン・ナーゲルスマン監督の下で目覚ましい活躍を見せ、ドイツ代表にまで上り詰めた。

 そんないつも変わらぬHSVが、本気で変わらなければならない事態に局面している。9月に、そのキューネが手を引くことを発表したのだ。もう場当たり的な補強もできない。今だけではなく、将来を見据えたクラブ哲学を明確なものとし、健全な取り組みをしていかなければ、クラブ存続さえも危うくなってしまう。

 だからこそマルクス・ギスドル監督は、ユース育ちの選手に白羽の矢を立てた。自前の若手選手を大切に育て、中軸を担ってもらう選手へと成長を促し、クラブの未来を託す。

 

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