大波乱のW杯予選に見る「代表チーム不確実時代」 困難極める強化と進む“個”への依存
メッシを消化できずに苦労したアルゼンチン
例えば、アルゼンチンはベースがはっきりしている国だが、今回は「メッシ」を消化できずに苦労した。
サンパオリ監督はFWパウロ・ディバラ(ユベントス)とメッシの共存を諦めているが、結果的に正解だった。それをもし探っていたら、時間切れで予選落ちしていたに違いない。メッシは存在が大きすぎる例外的な選手なので、バルセロナでも定期的にメッシのチームへの組み入れ方を変えている。そうしないと、たちまちメッシ依存が進行して周囲の選手が全部枯れてしまうからだ。
アルゼンチンの場合はメッシをどう生かすかを、戦術的に工夫するための時間がない。できるだけメッシがやりやすい環境を作る以外になく、似たタイプのアタッカーとの併用は互いの領域を浸食するだけで意味がないので、ディバラは使えなかった。
アルゼンチンと言えばFWの宝庫なのだが、メッシをトップ下に起用すると残るポジションは一つ。たとえFWゴンサロ・イグアイン(ユベントス)、FWセルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)、FWマウロ・イカルディ(インテル)、FWダリオ・ベネデット(ボカ・ジュニアーズ)がいても、使えるのは一人だけである。ディバラもMFハビエル・パストーレ(パリ・サンジェルマン)も使えず、豪華アタッカー陣がベンチに並ぶ。せっかくの資源も、メッシにリソースを集中させるので使い切れないのだ。
それでもメッシ集約型で割り切ったから、最終的には予選突破できた。チームとして進歩はしていないが、それはワールドカップ直前にやればいい。予選突破のためには安定感、分かりやすさが第一なのだ。