ブラジルからの「黒船」アデミウソンがJリーグデビュー戦で見せた意外な一面とは
献身的に守備に走るストライカー
ブラジルの名門サンパウロよりやってきたアデミウソン・ブラガ・ビスポ・ジュニオールことアデミウソンは、Jリーグデビュー戦で意外な一面を見せた。
横浜Fマリノスは14日、Jリーグ第2節でFC東京戦を迎えて敵地の味の素スタジアムに乗り込んだ。
横浜FMは7日、開幕戦で川崎フロンターレ相手に1-3と惨敗を喫して出鼻をくじかれた。その幸先の悪いスタートを断ち切るため、結果を必要としていた。しかし、0-0と不完全燃焼な勝ち点1を持ち帰るに留まった。
だが、収穫がなかったわけではない。8日に来日したばかりのFWアデミウソンが、この試合で実戦デビューを果たしたのだ。
これまで何人もの世界的スターがJリーグで活躍してきた。しかし多くは、キャリアの終着点として日本に行き着くケースがほとんどだった。近年では、そうした選手も珍しくなった。また、ゼニト・サンクトペテルブルクのFWフッキや、ローマのFWドゥンビアらは日本を経由してスターへの道を駆け上ったが、Jリーグ在籍時は世界に名の知れぬ存在だった。
そうした歴史を見ても、アデミウソンは異例の存在だと言っていいだろう。2016年に開催されるリオデジャネイロ五輪のエース候補がJリーグに参戦するというケースは過去にはなかったはずだ。ブラジル世代別代表の常連でもあり、欧州ビッグクラブも獲得に関心を示していた。その注目の次世代スターが、「黒船」として日本に上陸したのだ。
この移籍には、横浜FMとパートナーシップ協定を結んでいるマンチェスター・シティが交渉に携わったという。それが、横浜FMがこの超大型補強に成功した最大の要因である。
アデミウソンは合流1週間という過密日程の中、FC東京戦で先発に名を連ねた。世界が注目するストライカーとして観衆も期待に胸を踊らせていたはずだ。
しかし、試合が始まると、良い意味でも悪い意味でも、期待を裏切ることとなった。
得点を狙うどう猛さはそこにはなく、人一倍守備に走り回って味方を生かすプレーを貫いた。エゴイストな姿勢をのぞかせることも一切なかった。最前線を担う生粋のストライカーというよりは、献身的にチームプレーに徹するチャンスメーカーという印象を強く受けることとなった。
【了】
城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images