W杯まで残り8カ月ですべきこと データで見るハリルJ「カメレオン戦術」の可能性
過去2大会のトレンドと、ハリルJのアジア最終予選での歩みを数値で振り返る
日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督は、ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を戦うなかで、予想もつかないメンバー選考や多様な戦術によって時に批判を浴びたものの、チームを6大会連続のW杯出場に導いたことで「カメレオン戦術」を駆使する稀代の策士との評価を得た。代表チームを預かるということは、何にも増して結果が重要だということを再認識させられる。
一方で、これが6度目の本大会出場となる日本代表にとって、W杯は無事に出場することが最終目標ではないはずだ。自国開催の2002年大会と10年大会でたどり着いたベスト16を超える、「ベスト8進出」が現実的な目標だろう。その目標を達成するためには本大会までの残り8カ月でどのような準備を行うべきか。過去2大会の世界のトレンドと、これまでのハリルジャパンの戦い方から探っていきたい。
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まずは10年と14年W杯のデータを基に、パスデータを中心にスタイル分けした分布図から見ていきたい。
スペイン代表やバルセロナに代表されるポゼッションスタイルはパスの成功率、ポゼッション率が高いという特徴がある。一方、しっかり守り、ここぞという時に縦に速い攻撃を仕掛けるカウンタースタイルは、相手にボールを持たれる時間が長く、イチかバチかのパスを狙うため成功率が低い。08年欧州選手権の優勝に続き、10年W杯でもスペイン代表のポゼッションサッカーは他の強豪国を圧倒し、世界一に輝いた。
岡田武史監督が率いていた当時の日本代表は、W杯アジア最終予選において平均57%という高いポゼッション率と、コレクティブな守備によって本大会出場を決めた。しかし09年9月に行われたオランダ代表との国際親善試合において、ポゼッション率は43%に急落。W杯本大会直前のイングランド代表、コートジボワール代表という強豪国との2連戦においても同じような状況となった。つまり、世界のトレンドに合わせたポゼッションスタイルは、アジアで通用しても世界では通用しなかったことになる。
それを悟った岡田監督が本大会で採用したのが、低い位置に構えて後方にスペースを与えず、奪ったらセンターフォワードに抜擢したFW本田圭佑にボールを集めて攻めるスタイルだ。その結果がポゼッション率、パス成功率といずれも出場国でワースト3ながら、自国開催以外のW杯で初のベスト16進出という成績を収めた。
一方優勝したスペインはもちろん、オランダ、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、メキシコといった強豪国は、軒並みポゼッション率とパスの成功率が高かった。10年W杯の世界の強豪国のトレンドが、ボールを長い時間保持し、自らイニシアチブを握るサッカーだったことが分かる。