「どうやったって負ける時は負ける」 酒井宏樹がマルセイユで会得した守備の極意とは

強豪を上回るために「密にやらなくては…」

「ディフェンスは連携とコンビネーションで守れるかどうかが決まる。良い選手がいるから守れるものではなくて、お互いを信じ合って、少しずつ少しずつやっていくもの。細かな部分が声をかけなくてもできるようになればいいと思う。ヨーロッパの強豪は、コンビネーションができたうえで基本能力が高い。それを上回るには、密にやらなくてはいけないので、終わりはないです」

 ハリル監督はワールドカップ(W杯)に向けて、選手間での競争を強調している。それは当然、酒井にとっても例外ではない。

 その一方で、酒井の表情からは余裕も感じられ「あんまり何かギラギラしたものはないですね」とも話す。それは、守備組織が一朝一夕にできあがるものでないことを痛感しているからだ。だからこそ「自分が試合を決めようとは思っていないし、チームが勝てれば。数字にはあまり出ないポジションなので、積み重ねが評価につながると思う。やれることをやるだけ」と、冷静さを崩さない。

 欧州の中でも名門と呼ばれるチームでレギュラーとしてプレーすることは、常に批判的な視線や評価に晒され続けることでもある。そうした経験もまた、酒井の泰然自若とした姿勢につながっているのだろうか。試合に対しても「ニュージーランドがこういう相手だろうという情報もあるけど、(試合に)入ってみなければ分からない。入ってみて、自分たちの形を見つけられればいいと思う」と静かな口調は変わらない。

 酒井は今や、マルセイユの中心選手の一人に数えられるほど実績を積み上げてきている。クラブと2021年6月まで契約延長したのも、その証明だろう。経験に裏打ちされた冷静さと余裕は、W杯に向けて準備を進めるハリルジャパンの中でも代えの利かない存在となっている。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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