プレミア勢はなぜ欧州の舞台で勝てないのか? 浮かび上がる2つの弊害
「プレミア無双」の時代を取り戻すためには?
プレミア勢で唯一、ELの決勝トーナメント1回戦を突破したエバートンは、リーグ戦で12位に位置しており、CL出場権争い、降格争いにも巻き込まれることのない立場にある。その点で、プレミアの欧州参戦組で最も消耗の少ないチームであったと言えるだろう。
プレミアの上位陣は、リーグ戦を戦う上で、優勝はもちろんのことCL出場というノルマ達成に取り組んでいるはずだ。
しかし、リーグ戦のCL出場争いに力を注ぐあまり、肝心の本戦で実力を出し切る状況にない。そうした矛盾が生じてしまっている現状も然りだ。ただでさえ実力が拮抗したクラブが集っている上に過酷な日程をこなすのは、あまりに消耗が激しすぎるのだ。
かつての07-08シーズン、08-09シーズンのCLでは準決勝にプレミア勢が3クラブ進出しており、文字通り「プレミア無双」の時代だった。
その黄金期を取り戻すにはどうすればいいのか。まず、各クラブから長年問題視されていた「過密日程」においては、協会が負担を出来る限り軽減させるための具体的な取り組みに着手しなければならないだろう。観衆にとってはプラスではあるが、クラブ、監督、選手に負荷の続く状態を改善しなければ、両立は難しいのが現実だ。
そして、「実力の拮抗」に関してだが、確かにより多くのクラブが上位争いをしていることがプレミアの魅力であるのに疑いはない。
だが、優勝を争う上位6、7チームだけでなく、リーグ全体が高いレベルを保持している、そんな世界最高峰のリーグの中で、ファーガソンが率いたかつてのマンUがそうであったように、より抜きん出た真のトップ・オブ・トップが必要だろう。
現在、チェルシーがそのような存在となる体勢を整え始めているが、CL争いに専念するのではなく、CL本戦に注力できる環境を安定的なものにしなければならない。そのようなクラブが誕生すれば、自ずと欧州の舞台でも覇権を争う存在となるはずだ。
いずれにしても、現状を打開するため、真剣に再起に向けた議論を行う瞬間はやってきている。
【了】
城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images