過去3大会のW杯予選にない緊迫感 豪州戦は「ジョホールバル以来の一大決戦」
誰もが限界に達するなかで臨んだイラン戦
今回のオーストラリア戦に似ているのは、20年前のイラン戦だろう。
マレー半島最南端のジョホールバルを舞台としたアジア第3代表決定戦は、一発勝負で行われた。勝者はフランスへ辿り着くことができるが、敗者はオーストラリアとの大陸間プレーオフに回らなければならない。それも、ホームの第1戦は6日後に、アウェーの第2戦はその1週間後に組まれていた。
当時のオーストラリアとの力関係はほぼ互角だったが、2カ月以上に及ぶ最終予選を戦った選手たちは、心身ともに限界に達していた。主力選手のほとんどは、報道されない怪我や内科的疾患を抱えていた。決着のつく第2戦が敵地ということを考えても、プレーオフを勝ち抜くのは難しかっただろう。「イラン戦で絶対に決めたかった」という川口能活の思いは、選手全員に共通するものだったはずだ。
オーストラリアとの決戦を控えるバヒド・ハリルホジッチ監督のチームも、「ホームで決める」という空気に包まれている。20年前にイランと戦ったチームとの違いがあれば、「経験」だろうか。
「W杯出場を決めた過去の試合と比較するのは難しいですが、経験のある選手がチームに落ち着きをもたらしてくれている」
こう話すのは、キャプテンの長谷部だ。他でもない彼も、いつもと変わらない冷静さを漂わせていた。
2017年8月31日のオーストラリア戦は、久しぶりにヒリヒリとした一戦になる。それでも、日本には苦境を乗り越えてきた「経験」があり、それがチームの遺伝子としてユニフォームに刻まれているのは確かだ。
【了】
戸塚 啓●文 text by Kei Totsuka
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
page1 page2