友・田部和良に捧ぐ 人生という名の試合に最後に勝利したことを祈って

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「さっき選手全員の契約の話が終わったんだけど、その後で奥寺(康彦)さんに、『おまえはアウト(契約満了)だ』って言われたところだ。年末のこんなタイミングで言われたら次の仕事を探すのも大変だし、どうしようかと思って。奥寺さんが決めたことだからしょうがないけどな」

 ちょうどそのころ、欧州に事業拡大を試みていた携帯端末向けソリューション企業のインデックスから、欧州のサッカークラブ買収計画のサポートを頼まれていた。マーケティングリサーチ、クラブの絞り込み、当該クラブの精査、買収、そして買収後のクラブ運営のオペレーションまで含まれるプロジェクトだ。遂行するにあたって迷わずそれらの仕事を田部に依頼した。

 フルに彼の持つグローバルなサッカーのネットワークを活用したのだろう。イタリア、スペイン、ベルギー、フランス――。あっという間に各国の市場調査、候補クラブの情報など、相当な量のレポートが上がってきた。現地の事情を入念に調べるために当時もフランスのモンペリエHSCでプレーしていた広山(望)からも多くの情報を得た。

 数多くの候補先の中からクラブの所有者が自治体であり、財務面での申請に信頼性が持てそうなこと、国のサッカースタイルが魅力的であることなどの理由から、フランスのグルノーブル・フット38というクラブが最終の買収先に選ばれた。首都パリから高速鉄道TGVで約4時間、グルノーブルはアルプスの山々に囲まれた美しい街だ。そんな街の人気クラブを日本企業が買収するということは、決して簡単ではない。

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