リーグ10戦負けなしのアルビレックス新潟 地方クラブが目指す“未踏の領域”とは
チームは昨季終盤から勢いに乗り、クラブ経営も徐々に改善
そのような強化方針は少しずつ結実し始めており、昨季後半戦に限れば、ホーム9連勝、11勝2分け4敗と怒涛の快進撃を見せ、2ステージ制ならセカンドステージ優勝というほどの強さを発揮した。そして今季も第3節以降、リーグ戦10試合負けなしで、暫定5位につけている。
そうやって現場が改革を推進していく裏で、経営も徐々に改善されており、昨季の観客動員数は2位から3位に転落したものの、数自体は05年以降、初めて上昇に転じている。
当面の目標は予算規模を現在の約24億円からJ1平均の30億円程度まで押し上げること。そうすれば必然的に人件費もJ1の平均値である14億程度にまで引き上げることができ、常に上位を目指す戦力を整えることが可能となる。田村社長は「構想では入場料で10億、広告で10億、その他で10億」と話しており、すでに一時的に落ち込んだ広告収入はピーク時の10億に近い額に戻りつつある。あとは全盛期に11億円を超え、12年時点で7億円弱にまで落ち込んだチケット収入をいかに回復させるかだ。
選手や指導者の育成などを見据え、早くからシンガポールに進出したように、世界戦略が脚光を浴びるアルビレックス新潟。だが、クラブ本体の取り組みを見れば、あくまで「地元重視」ということが分かる。
「新潟はローカルの情報が日常的に報じられるので、みんなアルビレックスを知っています。それも県民性じゃないですかね。みんな、新潟のことが好きなのでしょう」
そう瀬戸さんが話すように、県民はこのクラブを心のどこかで誇りに思っている。あとは、いかにその思いをサポートにつなげるか。もう一度、Jリーグを席巻したあの勢いを取り戻し、未踏の領域へ――。地方クラブの挑戦は続く。
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佐藤岳●文 text by Gaku Sato