改築前最後の国立を彩ったプロヴィンチアと、ビッグクラブの一戦
1993年5月15日、V川崎(現東京V)―横浜M戦でJリーグの開会を宣言した川淵三郎・Jリーグ初代チェアマン(現日本サッカー協会最高顧問)は試合前の挨拶に立ち、国立競技場への感謝の気持ちを示した後、「この2つのクラブはJリーグを象徴するクラブです」とも付け加えた。
甲府は、2000年に累積赤字により解散危機に瀕したが、翌年に海野一幸社長(現会長)が就任してから13年連続黒字となった。大企業の母体を持たない地方クラブが、地域に密着して、2年連続5度目のJ1を戦っている。J2クラブにとっては、お手本的存在である。一方、浦和はJリーグ最大のクラブである。通算観客動員数が1000万人を超えている唯一のクラブであり、観客動員数も8年連続1位。2013年度の営業収入は57億8600万円と、Jリーグ最高額である。
プロヴィンチアとビッグクラブの戦いは、スコアレスドローに終わった。J1残留を目指す甲府は連敗を2で止め、優勝を目標に掲げる浦和は首位から陥落した。観戦した村井満・Jリーグチェアマンは「甲府も全力で戦えば守り切れたし、力がきっ抗している今のJリーグを象徴していたと思う」という感想を残した。今季も混戦Jは必至である。
国立競技場で開催されたJリーグ戦は288試合(J1は246試合、J2は42試合)。V川崎のFWマイヤーがJリーグ初ゴールを記録してから849得点(J1は718得点、J2は131得点)を重ねた。21年の歴史を締めくくる甲府―浦和戦。川淵氏は「今日は、両チームとも勝ちたい気持ちが強く、トーナメントのような緊迫感ある試合になった。健闘をたたえたい。大満足の試合でした。ただ、国立競技場最後の得点者が記録に残らなかったことは少し残念かな」と総括していた。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web