本田が挑むメキシコリーグの環境は? 先駆者証言、アルコールを使う驚きの高地トレも
「本田圭佑って、すごいんだなと」
若ければ大丈夫なのかという話はひとまず置いとおくとしても、本田は31歳で新天地にメキシコに選んだ。決して老け込むような年齢ではないが、当然ながら15歳のような肉体を持っているわけではない。パチューカのディエゴ・アロンソ監督は、国外からの新戦力には最低でも2〜3週間の適応期間を設けており、実際に本田は右足を負傷したこともあってリーグ開幕から4試合を欠場している。「アスリートなので、そこは順応すると考えている」との認識を持っている百瀬氏だが、「それでも90分フルに走れるかというのは課題」との懸念も示している。
ただし、不安を煽るばかりではなく、本田がメキシコでも活躍してくれるだろうとの期待も感じ取っていた。ストレートに、シンプルな言葉で本田という選手を絶賛している。
「本田圭佑って、すごいんだなと思いました」
現地でパチューカ加入会見に臨むその姿を見ていた百瀬氏は、「カズさん(三浦知良)に近いと思います。タイプは全然違いますけど、そのプロ意識というものは、そばで見ていて頷くことが多かった」とまで表現している。
「今回メキシコに行って、その行動や入念にリハビリをする姿の、一つひとつが真剣だというのが、そばにいてすごく伝わった。彼がただのサッカー選手じゃなくて、いろいろなことを考えながら、自分が楽な方向に進むっていう考えを決して持っていないということを、日本の方々にぜひ知ってもらいたい」
百瀬氏は「彼(本田)がパチューカに行って、僕もそれをきっかけにまたメキシコへ行けた」と嬉しそうに話してくれた。パチューカを訪れた後には、古巣トルーカのスタジアムにも足を運んだ。トルーカは今年創設100周年を迎え、街もクラブも大きな盛り上がりを見せているという。
本田の移籍によって、メキシコサッカーは日本でかつてないほどの注目を集めている。今から20年以上も前に単身メキシコへ渡り、メキシコにおける日本人プロサッカー選手の“パイオニア”となった男は、現役日本代表アタッカーの飽くなき挑戦に大きな期待を寄せていた。
[PROFILE]
百瀬俊介(ももせ・しゅんすけ)
1976年5月31日生まれ。1992年に中学卒業後に単身メキシコへ渡り、デポルティーボ・トルーカFCのユースチームに入団。93年に同クラブのトップチームと契約し、日本人で初めてメキシコリーグ所属のプロサッカー選手となった。その後、メキシコやエルサルバドル、アメリカのチームを渡り歩き、2001年にデポルティーボ・トルーカFCで現役引退した。コネクト株式会社の代表取締役会長。ブラウブリッツ秋田のクラブアドバイザーも務めるなど、多岐に渡って活躍している。
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石川 遼●文 text by Ryo Ishikawa
ゲッティイメージズ、石川 遼●写真 photo by Getty Images 、Ryo Ishikawa