世界で敬愛される“天才”バッジョ 対戦相手も魅了した1994年W杯で放った輝き
「ゴールを許したが、美しいゴールだった」
ボストンでの一戦は、ナイジェリアが勝つべき試合だった。前半27分に、セットプレーからイタリアDF陣のミスを突いてチームは先制する。同点を狙うイタリア代表の名将アリゴ・サッキは後半17分、MFジャンフランコ・ゾラを投入。だが同30分、ゾラは一発退場処分を受け、1点をリードされていたイタリアは数的不利の窮地に陥った。
この絶体絶命の危機を救ったのが、バッジョだった。左足が痙攣するほど消耗していたエースは、土壇場で輝きを見せる。同44分、右サイドからのDFロベルト・ムッシのクロスに姿を現すと右足で合わせて、ゴール左隅に同点弾を流し込んだ。
そして、延長戦でもイタリアの10番は決定的な活躍を見せる。絶妙なループパスをDFアントニオ・ベナリーボに供給し、PKを誘発し、PKキッカーを務める。ルファイの動きを読み切り、ゴール左隅に決勝点を叩き込み、2-1でチームを準々決勝に導いた。
勝利を目前にしながら痛恨の2失点を喫したルファイだったが、バッジョを憎むべき存在とは見ていないようだ。
「私は94年ワールドカップで(バッジョに)ゴールを許しましたが、怒りの気持ちはありません。美しいゴールでした。素晴らしい」
そして稀代のファンタジスタに向けて、敬愛する気持ちを次のように表明している。