9試合連続で負けなし J1で中位以下の資金力のアルビレックス新潟がなぜ結果を残せているのか
全体に浸透するチャレンジ&カバー
効率の良い運営には、選手構成や各選手・スタッフの給与面など、クラブ側の工夫もあるだろう。それを考慮した上で、ここではピッチ上のプレーに目を向けたい。
「相手が全然ボールを取りにこないのに、(先制後も)攻め急いでミスをして、相手に奪われてしまった」と柳下監督が言うように、5バックに近い陣形で低く構えた大宮戦は、新潟の最終ラインからボランチまでほとんどプレッシャーがない状態。左右にボールを散らしながらスペースでボールを引き出し、攻撃の糸口を探る余裕があった。
先制後に逆転を許した展開を選手、監督ともに課題に挙げたが、結果を残している新潟の良さは“チャレンジ&カバー”にあるように見えた。攻守にわたり、誰かがチャレンジした後の反応が速い。例えば、岡本英也の同点ゴールの場面では、レオ・シルバのパスに小林裕紀が裏へ抜け出した後のこぼれに、成岡翔と岡本の2人が顔を出していた。
前線からのプレスも、その好例。FWの岡本や鈴木武蔵が相手DFに対してスライディングしてルーズボールにすると、中盤の選手たちがセカンドボールを拾い、すぐさま次の攻撃へとつなげた。最終ラインの選手はもちろんのこと、ピッチ全体で果敢にチャレンジする守備は、それをカバーする味方がいるからこそ、効果的に生きてくるのである。
後半の攻撃に関して、ディフェンス・リーダーの大井健太郎は次のように振り返った。
「相手の間で受けて、中盤の選手が前を向けていた。取られる場面もあったけど、怖がらずにチャレンジしていくことが大事」
もちろん、チャレンジにはリスクが伴う。大宮戦のようにボールを失った後、カウンターを受けることもあるだろう。しかし、結果を出すために仕掛けは不可欠な要素だ。攻守ともにリスクをカバーしながらのチャレンジを繰り返すことで、今後も勝ち点という結果につなげられるに違いない。
【了】
田口和生●文 text by Kazuo Taguchi