森保監督だからこそ保った広島の結束 取り戻せなかった「堅守」と「自信」

優勝した3シーズンは1試合平均1失点以下

 だが、この新たなチャレンジが守備面での齟齬を生んだことは否めない。

 自軍に守備ブロックを形成する従来の守り方に、今季からハイプレスも取り入れて使い分けることを目指してきたが、選手たちの意識はハイプレスに傾き守備の間隙を突かれて失点。そこにセットプレーの失点も重なった。その状況を改善すべく、自陣で守備ブロックを固める従来の守備戦術に立ち返った時には選手たちが結果を出せない重圧からか、ボールホルダーに対して厳しく寄せられず、守備ブロックが機能しなくなっていた。

 期待の新戦力がチームにフィットしなかったことも、確かに低迷の一因になった。FW工藤壮人とMFフェリペ・シウバは広島のサッカーのなかで力を出せず、深刻な得点力不足に陥ったことにも森保監督は頭を悩ませたが、選手に求め続けてきたのはあくまでも「無失点」だった。

 5年間で三度のリーグ制覇を果たした森保監督には、「ウチは守備で勝ってきた」という自負があった。5年間で二人の得点王を生み出し(2012年=佐藤寿人、16年=ピーター・ウタカ)、15年にはリーグ最多74得点を挙げた。そのため得点力を武器にリーグを制してきたように思われがちだが、12年は34失点、13年は29失点、15年は30失点。リーグを制したシーズンの広島は、いずれも1試合平均で1失点以下に抑えている。

 そうした事実があるからこそ、森保監督は今季開幕からの低迷を受けても、守備の本質を見つめ直すことを徹底し、選手たちに泥臭く、我慢強く戦うメンタリティーを求めた。

 ただ、指揮官として思い切って守備を固めるサッカーに舵を切れないジレンマにも苛まれた。広島はボールを保持して、試合をコントロールしながらゲームを進めていくチーム。「そのベースをあまりにも崩すと戻るところがなくなってしまって、糸のなくなった凧のような状態になってしまう」ため、サッカーのスタイルを大きく変えるわけにはいかなかった。

 これまでの広島のサッカーを展開していくためには、自分たちが自信を持ってアクションを起こし、チャレンジしていかなければならない。だが、残留争いを繰り広げるなかでは、選手はどうしてもミスを恐れてしまう。

 

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